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『養生』は中国医学から来ている言葉で、「心身の健康を保つこと」を意味します。からだを大切にいたわり、健やかに保つという考え方。今は、病気をしたとか体調をくずしたと聞くと「お大事に」という言葉で相手を労りますが、少し上の世代の人たちなどは「養生しいや」と声をかけて、お見舞いの気持ちを表現していましたね。
そんな人を思いやる言葉が、やがて「物を保護すること」という意味で広く使われるようになりました。
建築現場でもよく耳にする『養生』という言葉。職人の世界では、とくに大切にされている考え方です。医学における養生と同じように、建物の部材を傷や汚れから守り、健やかに保つ。そんな思いが込められています。
現場で働く大工さんたちは、毎日のように養生作業を行っています。
新しく設置した建具や床材を傷つけないよう、段ボールやテープで丁寧に保護する。
工事中は砂埃や雨が入らないよう、大きな開口部にはしっかりとシートを張る。とくに雨の多い時期は、この養生が家を守る重要な役目を果たします。
人の行き来が多い階段には養生材を敷いて、上り下りで傷がつかないよう気を配る。
水回りの工事では、浴室や洗面台など傷つきやすい設備を入念に保護。
外壁の塗装時には、塗料が窓やドアに付着しないよう、周囲を慎重にマスキング。
このように、建物のあらゆる場所で必要となる養生作業。
養生はとても手間のかかる作業ですが、この手間を惜しまない気持ち、1つひとつの工程に込められた大工の細やかな心配りが、美しい仕上がりを支えています。
だから、養生の仕方を見れば、その建築会社の仕事の質が分かるともいわれています。丁寧な養生ができる大工さんは、それだけ家づくりにプライドと愛情を持って取り組んでいるということでしょう。
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